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うつ病、冬期うつ(ウインター・ブルー)について

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皆さんおはようございます。

今回は、翻訳・要約のブログをお休みして、表記テーマの内容について、お話してみたいと思います。

まず、うつ病に関してですが、気分の落ち込みがひどく、いままで関心や興味があったことがなくなる、感情の表現が少なくなる、意欲がなくなる、考えがまとまらない、うまく出てこない、自分を過度に責める、自分に価値がないと考える、不眠などが中心症状となります。

また、症状に戸惑い、不安や焦燥が強い場合も多く、症状の表現系は人それぞれ違いがあるとの認識も大切です。(特に高齢者のうつ病は、不安や焦燥、身体不調が主訴となることも多いです。)

症状が重く、長く続くケースはうつ病と考え、今後の治療方針を検討することになります。

診断基準では、2週間以上となっておりますが、参考程度でいいと思います。(恣意的な基準のため)

よく聞かれることですが、適応障害との違いですが、適応障害は、ストレスを誘因として、軽度の抑うつ気分、意欲低下、思考の停滞感などから、日常生活や社会生活に支障がでる状態です。

個人のストレス対処行動の在り方、性格傾向、認知の仕方も重要な要因となり、環境に順応するまでのストレス反応とも考えられます。

適応障害は、うつ病に比較して、症状が重くない、一程度回復するまでの期間が短い(ストレス要因の回避や解消で、比較的早期に症状が軽快する)などの違いがあります。

また、直近の症状のみだけではなく、過去の生育歴(幼少期の発達に問題はなかったか、両親との関係性、両親の養育態度など)、性格傾向(まじめ、几帳面、完璧主義、社交的、内向的、気分屋、熱中症傾向、あるいは依存性や回避傾向があるか)、学生時代の様子、担任からの指摘、友人から言われたこと、成績表なども診断を補助する上で大切な情報です。

軽症と思われても、自分なんて価値がない、どこかに消えたい、希望がない、といった思いを内に秘めるケースもあり、注意が必要です。

実際の外来では、過労状態、対人ストレス、環境と本人の資質のミスマッチによるストレスの蓄積、体の病気(脳梗塞やがん治療)に伴う二次性のもの、栄養問題(タンパク質、ミネラル、ビタミン不足)などが多いです。

重度のうつ状態となり相談されるよりも、適応障害の診断に当てはまる人が、クリニックでは圧倒的に多い印象です。

次に性差に関することですが、女性に関しては、生物学的に、変化を伴う性(月経、出産、閉経など)であること、女性ホルモンの月内変動があり、それが大脳辺縁系(気分や情動に関与する脳の奥に存在する場所)に影響を及ぼすこと。(気分や情動の変化が周期的に起きやすい)

女性は男性に比べて、大脳辺縁系が大きく、情動的で、感性豊かで勘が働きやすい一方で、落ち込みやイライラしやすく、男性より感情面でエネルギーロスが大きくなりやすいことが考えられます。

また月経もあり、鉄不足やストレスから甘いもの依存になりやすく、タンパク不足の悪循環になりやすいです。

特に、PMS(Pre Mensutrual Syndrome 月経前症候群)は有名ですね。女性ホルモンの変動は、脳の機能、特に情動を司る大脳辺縁系に影響を及ぼし、不安や焦燥、気分の落ち着かなさ、気分の落ち込みにつながりやすくなります。

女性ホルモンの急激な変動を避けるため、乳製品の回避を勧めることも多いです。代わりにアーモンドミルクや、オーツミルクを推奨します。

産後うつも有名ですね。これも出産後の急激な女性ホルモンの変動、育児への先行き不安、役割変化への戸惑いに起因していると考えられますが、母体の栄養、つまり赤ちゃんに栄養を分け与えたため、タンパク不足や鉄分不足が重くなっていることが少なからずあります。

さらに社会的側面としては、女性の社会進出、女性としてのアイデンティティー・役割の多様化と迷い、悩みの内在化など、ストレスを受けやすい背景を有します。

季節性のうつ、冬期うつに関しては、やはり日照不足に伴う、ビタミンD欠乏、セロトニン不足に伴う脳内の神経伝達物質の乱れ(インバランス)が要因と考えられます。

セロトニンが減少すると、その代謝産物であるメラトニンも減少し、概日リズムが乱れ、いわゆる季節性の時差ボケ状態になり、起床困難、起床時の抑うつ気分、浅眠、疲れが取れないことにつながると考えられます。

またセロトニンは、ドーパミンやGABAなど、脳内のアクセルとブレーキの役割の調整役の一面もあり、意欲や集中力、睡眠とリラックスにも影響を及ぼすと考えられます。

また、元々の栄養不足や代謝エネルギー不足から、外部環境ストレス(寒冷)に脆弱になっている要素も考えられます。

予防や改善方法に関しては、お手軽にできることとして、朝の散歩を推奨します。寒い季節に入りますが、できれば30分程度が理想です。朝のほうが、太陽の光も斜めになり、日に当たる体の表面積が増えるからです。

1日のリズムが整うこと、皮膚でビタミンDが生成されること、リズム運動でセロトニンを生成しやすくなること、運動自体が抗うつ効果が望めるからです。

また自分に合うリラックス法の検討も大事です。入浴や温泉、ゴルフ、気の合う友人との会食、家族旅行もいいかもしれません。自然の中に、30分程度、身を置くことも抗うつ効果が望めます。山や川沿い、海などは効果的です。仲のいい人と行くと、気分のよさを共有できて、セロトニン、オキシトシンが刺激されてなおいいですね。

人とのつながりを大事にすることも、メンタルを安定させる大事な一因です。リラックスできる相手と話すことで、自分の悩みを言葉にし、外に出して、客観視や相手の知恵を利用できる機会が増えます。

その結果、ストレスに対する見方が変わり、気分が楽になる可能性が広がります。思わぬ解決策やアイディアがでるかもしれません。気心の知れた人とのつながりは大切です。

こころの持ちよう(マインドセット)としては、冬はペースダウンしていいと、自分に寛容になること、落ち込みも一つのサインであり、人生を生き抜く生存戦略のひとつとして、休むことも考えること、カレンダーをうまく利用して長期連休を作ることなどがいいと思います。1年、あるいは人生を時間軸として、休むことに寛容になって頂きたいです。

あとは、やりたくないことはやらない、求められている水準を考えて、それ以上はやらない、など普段の行動を見つめ直し、要領を重視することも重要です。

食事としては、セロトニンの原料となるトリプトファンが多い食材は、豆腐、カシューナッツ、カボチャの種、ゴマなどナッツ類、チェダーチーズ、パルメザンチーズ、卵、鶏肉など積極的に摂取することが推奨されます。

ビタミンDとしては、しいたけ、きくらげ、ししゃも、しらす、鮭などがあげられます。ビタミンDの元である、コレステロール値もしっかり上げておくことも、うつ予防に重要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

by nakasone | 2022.11.14 |