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~起立性調節障害の栄養療法アプローチ~

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善例

ご覧頂きありがとうございます。久しぶりの投稿をさせて頂きます。

普段の外来終了後は、クタクタになっておりまして、なかなかブログを作成する気力がありませんでした。笑

また記載が間に合わないほど、多くの方が栄養療法(オーソモレキュラー療法、分子整合療法)で改善されているため、あまり新味がなくなってきておりました。しかし、10代の患者さんで、改善されたケースは重要で、人知れずご家庭で同じお悩みを抱えた方が多いと思われますので、ご紹介いたします。

16歳の男の子です。

中学時代は成績、スポーツも万能で、人当たりもよく、友人の勉強の面倒を見るほどの性格の持ち主。

2月末、高校は無事に志望校に合格し、父との約束でiPADやプレーステーションを購入。コロナの影響で、休校や外出制限もあり、自宅でゲームに没頭するようになった。

6月から分散登校が始まるも、不眠、後頭部の頭痛、聴覚過敏でイヤホンを耳栓代わりにずっと使う、寒気、億劫で起床困難となり、登校や離床を促すと、感情的になり、反抗するため当院を受診されました。

当初の治療スタンスは、環境変化に対する適応障害として、スルピリドや抗不安剤少量、セルトラリンなど投薬もほぼ無効でした。また精神療法も思春期特有の反抗的な態度や、会話の広がりも欠き、ラポール形成困難な印象あり。やはりすごく気になるので、7月に採血検査、栄養療法的解釈を行いました。

まず鉄ですが、フェリチン30、UIBC271とかなり鉄不足が深刻でした。鉄は、エネルギー代謝や、脳内のドーパミン合成にも深く関与します。鉄過剰も良くないですが、低値はもっと問題です。頭痛、聴覚過敏、倦怠感、億劫に関与します。個人的には、ゲーム依存も関与があると思っております。

ALT=7と、これもビタミンB6の深刻な不足を示唆します。(AST=16と差が大きいこと)ビタミンB6は、タンパク代謝や貧血改善、脳内の伝達物質(セロトニンやGABA)の合成に関与します。不眠や感情不安定、抑うつや、疲れが取れないことに関与します。

BUN=12とタンパク質代謝も十分とは言えない状態と考えられました。タンパク質は体の構成要素。現代人が不足しがちで、成長期やアスリートには一番重要です。意外かもしれませんが、脳の神経細胞は、アミノ酸で情報をやりとりします。タンパク質が不足すると、脳の回転が緩慢となります。

早速、ビタミンB、ナイアシンアミド、ビタミンC、鉄の服用と、タンパク指導、出来るだけプロテインの摂取をお願いしました。

7月下旬、出席日数はぎりぎりの状況も、何とか朝ごはんが摂取できるようになった。お父さんは心配そうで、退学も意識されたようです。ナイアシンアミド3gを指導。鉄も飲めるので、増量指導。

8月下旬、母曰く、「一歩進んで、二歩下がる印象」と。夕方から元気で、クラブや友人とも遊べると。

経過途中、不眠がつらいとのことで、ベルソムラ、マイスリー、レンドルミンを処方も今ひとつの印象。

10月初旬、登校できる、イヤホンもいらなくなる、急に良くなったと。ゲームも試験前に自制できるようになる。

11月、元気と。運動もこなし、イヤホン、寝る前の薬も不要とのこと。この時の採血は、フェリチン=75 UIBC=232 ALT=10(AST=26) BUN=16といい経過でした!真面目に飲んでくれているようでした。鉄の貯金も進み、エネルギー代謝、タンパク代謝がうまくいっていると解釈できました。

1月、入眠起床困難が再燃し、スマホをいじってしまうとのこと。メラトニンを開始。メラトニンは体内時計を正常化し、自然な眠気、また抗酸化作用や免疫力強化につながります。

5月現在、起床して朝食を食べ、元気に登校できております。採血では、BUN=10台とタンパク質をさぼっているので、プロテイン等の指導を継続し、そろそろ仕上げの段階に入っております。

有名高校の、前途ある10代の男の子、なんとしても改善してもらいたい思いが通じた感がありました。私としても、治療冥利に尽きるなと、心の中でガッツポーズしておりました。笑

慢性疾患には、栄養療法は非常に有益です。

この方はうまく行きましたが、もちろん治療に時間がかかるケースや、消化や吸収の問題がある方、腸内環境に問題があるケース、隠れた重金属問題など、今後も取り組むべき課題が多いのも事実です。しかし目立った副作用なく、改善したときの実りの大きさは、皆さんが試していただきたい治療の一つです。

是非ご検討や各種書籍で勉強なさってください。

藤川徳美先生、溝口徹先生などの書籍をご参照ください。

 

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海浜ハートケアクリニック
院長 仲宗根 敏之
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by kaihin staff | 2021.05.31 |