パニック障害の投薬と栄養療法の併用による寛解ケース
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新年あけましておめでとうございます!
皆さんは年末年始はいかがお過ごしでしたでしょうか。ご家庭で厳かに新年を迎えられた方も多かったと想像します。
かく言う私も、家とクリニックの往復で過ごした年末年始でした。保険請求業務もあり、あまり休んだ気はしませんでしたが・・・
それでは、クリニックにご相談にこられることが多い事例を、紹介させて頂きます。
10代の女性の患者さんです。
大学に普通に行けていましたが、新型コロナの影響でオンライン授業が中心となり、専門的な内容のレポート作成の負担も重なり、R2.6月に通学途中の電車の中で、過呼吸発作を起こしてしまいました。アルバイト先でも発作を呈するようになりました。
その後、大学の試験や授業への通学が困難になり、内科や心療内科を受診。抗不安剤など処方を受けるも改善しない、頭痛を起こすため、R2.10月当院初診となりました。
パニック障害として、抗不安剤処方が中心でしたので、SSRIであるジェイゾロフトを追加しました。(セロトニン再取り込み阻害で、不安を軽減し、パニック発作の予防を図るため。) また血液検査も行いました。
食事摂取が不安定で、不眠、朝の起床困難、ふらつきも顕著で、誰か安心できる人がいる状況でも発作が出るため、全く意味が分からない、とのことでした。
採血結果より、AST/ALT=18/9 LDH=171とビタミンB6ビタミンB3の不足が示唆され、フェリチン=24UIBC=291であり、鉄不足も顕著でした。(UIBCとは鉄を運ぶトラックのことで、これが高いと、体が鉄をほしがっているサインです。当院無料で追加検査しております。)
また一番の問題点は、グリコアルブミン=11.4と低血糖を示し、1.5AG=9.0と食後高血糖の存在(食後1~2時間後に血糖値が170mg/dlを超えている)が考えられました。(この2つの項目も、当院無料で追加検査しております。)
つまり血糖値スパイク、それに続くインスリン過剰分泌、その後低血糖となり、そこで血糖値を維持しようと体が反応し、交感神経が過剰に働き、パニック発作が誘発される可能性が示唆されました。
まずは食事指導、炭水化物や糖質の制限(まず半分に)、血糖の変動の少ないタンパク質・脂質や野菜の摂取を中心にすること、プロテインの利用、欠食しないことを指導し、また食欲低下もあるため、スルピリドやプロマックDといった胃薬も追加処方しました。
半信半疑そうでしたが、データが悪いので、サプリメントを追加しました。ビタミンB150mg、ナイアシンアミド1500mg、グルタミン3000mg
これらは、タンパク代謝や糖新生をサポートして、低血糖予防やエネルギー代謝改善、精神安定に寄与する基本的な処方です。またグルタミンは、体にもっとも多いアミノ酸で、低血糖予防(グルコース・アラニンサイクル、つまり糖新生に関与)、精神安定、消化管のエネルギー、消化管修復促進、免疫力アップにも寄与します。
2週間後、お父さんの懸念通りとのメモあり。不眠、発作への恐怖心、入浴困難や、スムージー摂取後の頭痛や気分不良があり、再度食事の確認を行いました。この時点で飲めそうなので、フェルム鉄100mg追加処方。
2週間後、まだ頭痛や吐き気、立ちくらみ、全身倦怠感、動けない等があり、本人の希望もあり、SSRIからSNRIであるサインバルタへ変更。(ノルアドレナリン再取り込み阻害で、意欲改善をサポート。)
1週間後、だいぶ元気そうも、やや元気が出すぎの印象(アルバイトを頑張りすぎる、爆買いなど)も、なんとか自制できる範囲とのこと。頭痛や体調がすぐれないときもあり。焼き肉やホルモン、プロテインの摂取もあり、支持するが、1日1食の日もあり、繰り返し諸注意を行いました。
2週間後、概ね良好も、急激に悪くなる、頭痛や寝こみがあり。ロキソニンの利用でしのいでもらう。下痢、腹痛もありビタミンA2万単位・ビタミンD1万単位を追加。(消化管粘膜細胞の正常化を狙う:過去の糖質過多や、タンパク不足で消化管が弱っている、消化・吸収できないことは良くあります。)
2週間後、波はありながらも、改善していると。まだ急激に悪くなる時があり、また大学にも恐怖心があるとのこと。リーゼ不安時頓用で、なんとかしのいでもらう。また行動療法的に通学を避けすぎないことを指導。
2週間後、年末年始の人込みで、一度過呼吸があるが、それ以外は大丈夫で、大学にも挑戦しいきたいとのこと。この日は始めて父の状態報告のメモがなく、かなり良くなった証拠かな、と思いました。
投薬治療のみでは、なかなかここまで短期間での改善は得られなかったかと推測します。また現在は不眠の投薬なしで夜はぐっすり休めておられます。ほかのお薬の減薬も、タイミングを見計らないながら行いたいですね。
これからまだ経過の波はありそうですが、なんとか知恵をしぼり、対応していきたいです。
以上長々となりましたが、閲覧ありがとうございました。同じような症状でお悩みの皆さんに、お役に立てれば幸いです。