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~統合失調症の栄養療法①~

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統合失調症は治療が難しく、精神科医にとって治療的関与は、至上命題とも言える代表的な内因性疾患です。

今回は入院も考慮しないといけない程の方が、家族の協力の元、右往曲折を経て安定されたケースをご紹介いたします。

30台男性、5年前より東京での就労時より異常行動があり、母が看病のため同居。実家へ帰省し、心療内科や内科、カウンセリングを経て当院を受診。

外出先で、人が気になり、気になる人がいると、独語がひどくなり、父に当たり散らす状態でした。幻聴体験もあるようで、実家でも落ち着かず、散歩して奇異な行為を呈するようでした。

父がエイブラハム・ホッファーの勉強をされており、ナイアシンを開始されていました。

初回血液検査で、AST/ALT=84/130 LDH=240と脂肪肝傾向、ナイアシン不足ははっきりしませんでした。

BUN=14.8とタンパク不足あり、フェリチン=502と一見高値でしたが、UIBC=279と上昇があり、鉄不足は潜在的に存在し、鉄分の多いタンパク摂取不足が想定されました。

CRP=0.06 1.5AG=13.2 グリコアルブミン=11.2と内臓脂肪による炎症ないし腸内環境悪化、食後高血糖と低血糖時間の混在、つまり血糖値が不安定であることが示唆されました。

早速糖質制限を指導(血糖値の上昇とインスリン過剰分泌に伴う低血糖予防)、プロテインを含めたタンパク指導、ナイアシンフラッシュフリー1500mg、ビタミンB150mg、ビタミンC3000mg、ビタミンE800mgを開始指示しました。

2ヶ月後も同様の状態が継続し、ナイアシン3gから4.5gまで漸増、亜鉛やEPA/DHAを追加。(ピロール尿症の可能性や、他のビタミンの活性化、神経細胞の再生を企図)

1ヶ月後も同様で、被害妄想があり、一旦オランザピン5mgの投薬を追加。

その後は落ち着き、車の外をを過度に気にすることもなくなり、当院に電車でご家族で来院されるほどに安定。

しかし昼まで寝てしまう状態、いわゆる急性精神病後抑うつ状態と判断し、オランザピンは2.5mgまで減量。2ヶ月後も同様であるが、サプリメントは自己管理で内服、単独での外出も可能に。オランザピン1.25mgまでさらに減量。自室にこもることが多いが、幻聴や幻視体験はない状態で推移し、ご両親も、しばらく本人のペースで見守りたいと一定の安堵感があるようでした。

4ヶ月後の採血では、AST/ALT=18/19ときれいに脂肪肝傾向が軽減!UIBC=212と理想的な200台に近づき、MCV=94.2と理想値へ。潜在的な貧血の改善。

1.5AG=8.9と、糖質制限の結果と解釈しました。

薬が効いたのではないか、と言われそうですが、5mgで奏功したこと、その後の少量維持はなかなかないことではないでしょうか。

また自らサプリメントを飲むということは、コンプライアンスに難渋することの多い統合失調症のケースで、特筆すべき点であること、また発達障害の背景因子がありそうな難治例であることを考え合わせれば、十二分に栄養療法が効果を挙げていると考えられます。

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海浜ハートケアクリニック
院長 仲宗根 敏之
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by kaihin staff | 2019.12.09 |