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甲状腺機能低下症(橋本病)の栄養療法改善例

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50歳代の女性。

橋本病とのことで、治療歴は長い。

友人の紹介で栄養療法に興味があり、R6.9月初診。

初診時は、顔のむくみが他覚的にはっきりしていた。

 

初診時の他院採血結果は、

T-Bil=1.74  ビリルビン高値で、酸化ストレスによる赤血球の血管内溶血に伴う上昇あり。

AST/ALT=95/81 肝臓への負担あり。慢性肝炎も併発か。自己免疫性かも。

ALP=34 低い。補因子である、亜鉛やマグネシウム不足を示唆。(60程度はほしい)

LDH=713 肝臓・筋由来の酵素の逸脱かなりあり。

γーGTP=39 肝臓への負担あり。

CK=3273 筋肉の損傷か、酸化ストレスが強いのか。高値。

総コレステロール=410 高値。甲状腺機能低下に伴う排泄障害か。

BUN=11.8 タンパク質不足。

クレアチニン=1.0 腎臓にも負担がかかっている印象。

ヘモグロビン/MCV=12.9/102.6 軽度貧血と、MCV高値で大球性変化あり。飲酒あり。

TSH=193.85 高値。甲状腺への負担が大きい。TSHが高いと、過酸化水素の合成が高まり、甲状腺にダメージ。

FT4=0.1未満 すごい少ない。

FT3=1.13 少ない。FT4から活性型のFTへの変換がうまくいっていない=セレン、亜鉛、鉄不足を示唆。

抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab)=64.76 高値

抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO-Ab)=3未満

 

抗酸化対策、免疫調整、ミネラル補充、プロテインも含めたタンパク質の摂取指導と、

グルテンフリー、カゼインフリーもチャレンジを指導。(腸内環境、免疫補正のため)

サプリメントは、ビタミンE800単位、ビタミンB群100mg、メチルコバラミン2000μg、ビタミンC3g、ナイアシンアミド1500mg、ビタミンA2万単位、ビタミンD5000単位、マグネシウム200~400mg、微量ミネラル(セレン、亜鉛、クロム、マンガン含有)2C/日

でスタート。

 

R6.10月 明らかに顔面の浮腫が軽減している。

当院での再検査の結果は、

T-Bil=0.7 酸化ストレスの軽減ありと判断。低下。

AST/ALT=32/34 肝臓への負担が取れて、脂肪肝傾向が見えるようになる。

ALP=40 上昇傾向でいい感じ。亜鉛、マグネシウム補充で。

LDH=255 顕著に低下。酸化ストレスの軽減か。

γーGTP=23 肝臓への負担も軽減。

CK=295 低下。

総コレステロール=198 正常範囲で、理想的な範囲に落ち着く。

BUN=14.9 タンパク質不足解消方向へ。タンパク質は自己免疫疾患の治療にも必要。

クレアチニン=0.68 腎臓のクリランスも改善か。

ヘモグロビン/MCV=12.3/102.2 軽度貧血と、MCV高値で大球性変化あり。あまり変化なし。

フェリチン=102 軽度炎症はありそう。

TIBC/UIBC/血清鉄=283/159/124 微妙な範囲。

亜鉛/銅=109/140 亜鉛も真面目に飲んで頂いている。

グリコアルブミン/血糖値=16.1/87 糖質が多いため、糖質制限を指導。(14.5ぐらいが理想)

1.5AG=15.7 食後高血糖ありそう 18をカットオフライン

TSH=28.657 TSH順調に低下。

FT4=0.98 顕著に増加。

抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab)=297 上昇してしまう。

 

 

R7.4月 調子はいいと。快便で助かる。口腔内の粘膜がまだ腫れぼったいが無視できるとのこと。

検査データは、

T-Bil=0.5 さらに低下。

AST/ALT=27/24 さらに低下。肝臓の負担軽減。

ALP=61 理想的なレンジへ。

LDH=182 顕著に低下。

γーGTP=13 さらに低下。 肝臓への負担も軽減。

CK=88 低下。

総コレステロール=195 正常範囲で、理想的な範囲。

BUN=13 タンパク質の摂取を指導。プロテインさぼりぎみであったと。

クレアチニン=0.53 腎臓のクリランスも改善か。

ヘモグロビン/MCV=13.6/99.8 貧血や大球性変化も改善。胃・腸粘膜の改善から、消化吸収が順調か。

フェリチン=88 軽度低下して、いい方向。 

亜鉛/銅=115/166 亜鉛減量を。

グリコアルブミン/血糖値=12.6/90 糖質制限か。

1.5AG=22.6 食後高血糖改善。 18をカットオフライン

TSH=1.741 TSH順調に低下し、正常範囲、理想値へ。

FT4=1.03 増加。

抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab)=204 軽度低下。

すごく結果がいいので、ブログにしてもいいですか、と尋ねたところ、「やったー」と、のりがいい方でした。さすが、大阪の方とは私は気が合いますね。 (笑)


抗酸化アプローチ、タンパク摂取、ミネラル補充で顕著に改善したと思われる例です。

甲状腺機能低下症(橋本病)、慢性甲状腺炎、自己抗体陽性の方には、微量ミネラルのセレンが特に有効と思われます。

甲状腺ホルモンの活性化に関わる(脱ヨード酵素)のはもちろんのこと、甲状腺内に存在するセレンを補うことで、過酸化水素の無毒化が可能となり、甲状腺の濾胞細胞が壊れにくくなります。

そのため、自己免疫の標的になりにくくなり、改善していったと考えられます。

Selenium and thyroid diseases – PubMed

中国の方の論文です。中国ではセレン不足による克山病が有名ですね。

更にセレンは、Treg細胞を活性化して、自己免疫性疾患と関係があるIFNーγを減少させ、

ILー1βをアップします。

病院でも、チラージン以外の治療法がないので、是非参考にしてください。

ただし、ヨウ素不足や鉄不足の方は、セレンの補充に注意が必要です。

 

by nakasone | 2025.07.05 |