ブレインフォグと脂肪肝の16歳高校生男児の栄養療法改善例
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16歳の男子高校生。進学校に在籍。
中耳炎の既往あり、抗生剤の内服機会は多かった。アレルギー傾向もあり。
R7年1月頃より不調で、不安や不眠、頭にフィルターがかかったような感じで、昼間も眠気が強い。
母親が藤川徳美先生の本を読み、タンパク質増量の実践はあり。
栄養療法を希望され、R7.3月当院初診。
<R7.3月 初診時の採血結果>
AST/ALT=31/44 ALT優位で、脂肪肝あり。
LDH=164 ナイアシンの不足多少ありそう。
総コレステロール=148<180
(コレステロールはアセチルCoAから作成される。エネルギー不足でコレステロール低下
=TCA回路に問題がありそう)
BUN=23.7 タンパク質代謝は十分か。むしろ腸内環境の悪化、便秘傾向、脱水なども疑われる。
ヘモグロビン/MCV/MCH=14.3/89.9/30.2 軽度か中程度の鉄不足あり。MCHは32ぐらいが理想。
フェリチン=64 貯蔵鉄は男児の中では低値。
TIBC/UIBC/血清鉄=326/246/80 UIBC>200であり、鉄不足傾向を示唆。
亜鉛/銅=104/87 急性炎症もないが、タンパク形成に少し問題ありそう。血清銅は100ほしい。
グリコアルブミン/血糖値=10.9/77 低血糖顕著(グリコアルブミン14.5ぐらいが理想)
1.5AG=25.3 食後高血糖はなし。
<初診時の指導内容>
低血糖顕著のため、糖質制限の再確認、フルーツ回避、頻回な食事でならべく低糖質の食事内容を確認。
また、エネルギー産生・低血糖補助の観点から、ビタミンB、ヘム鉄、ビタミンC、ナイアシンアミドを開始。
<その後の経過>
4月 眠れる日と眠れない日がある。Mg追加へ。
5月 朝の気分低下の自覚。眠りが浅いとのことで、メラトニン3mg開始。
6月 食欲がない。3月から2kg体重低下あり。勉強も集中できない。数学はできるが他の教科ができないと。
7月 睡眠は半々程度。落ち込むと数日は続く。 副腎サポートのサプリを追加。
8月 早期覚醒が継続のため、デエビゴやレスリンなど投薬へ。意欲アップのため、チロシンや
低血糖改善のためクロムも併用。
<芳しくない状態が継続>
10月 不眠、朝の眠気など継続。下痢もあり、腸内環境是正のため、カンジダ除菌系のハーブを利用。
10月中旬 診察室に小走りで元気そうに入室。
普通便と下痢便が半々と。5時覚醒や7時まで休める日も出てくる。
頭のぼーとした感じがましと。母親曰く、「勉強しだしました!」とのことでした。
<11月採血結果>
AST/ALT=19/22 ALT優位であるが、脂肪肝傾向は顕著に改善。正常範囲内に。
LDH=159 横ばい。
総コレステロール=156<180 軽度上昇
BUN=29.4 まだ腸内環境は悪そう。
ヘモグロビン/MCV/MCH=14.3/93.4/30.6 MCVは上昇あり。
フェリチン=224 やや上がりすぎ。炎症の存在。
TIBC/UIBC/血清鉄=274/209/65 血清鉄低下から、炎症あり。
亜鉛/銅=105/99 いいバランス。
グリコアルブミン/血糖値=12.4/80 まだ低血糖も改善傾向。
1.5AG=20.4 食後高血糖はなし。
11月中旬 まだお腹の調子は定まらない。朝はしんどさが少しある。
<サプリメント>
腸内修復アプローチとして、グルタミン、ビタミンA、ビタミンD、低血糖サポート、脂肪燃焼のためにアセチルLカルニチンを開始。
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<考察>
一般的な、栄養療法指導や、定型的なサプリメントではなかなか改善しなかった例です。
脂肪肝がなかなか取れないため、母親とも一緒に小首をかしげていたのですが、どうも腸内炎症が肝臓に飛び火していたようです。
過去の抗生剤の頻回な利用、アレルギー既往より、カンジダによるdysbiosis(腸内環境のバランスの悪化)が予想されました。
採血で、脂肪肝傾向があり、腹部症状(便秘・下痢の繰り返し、おならが多い、腹部膨満、げっぷが多いなど複数に渡る症状)がある場合は、dysbiosis、リーキーガット症候群ありと判断したほうがよさそうです。
<サプリメント>
今回の症例にも利用したカンジダ系のサプリメントについては、下記ブログをご参照ください。
過敏性腸症候群に、カンジダの陰 | 海浜ハートケアクリニック
振り返ると、初診時の採血で低血糖が顕著であったことも、背景にカンジダが悪さをしていることが考えられました。
カンジダや、その産生毒素であるマイコトキシンなどは、ミトコンドリアのTCA回路を阻害し、エネルギー産生を低下させます。
ブレインフォグ、眠気、意欲低下、うつなどの原因になることもあります。
また、低血糖になりやすいため、余計に甘い物がほしくなり、カンジダを更に増殖させる悪循環を形成します。
<論文1>
マウスモデルですが、非アルコール性脂肪肝にアムホテリシンB(抗真菌薬)を投与して、ALTが下がり、コレステロールや中性脂肪も下がり、炎症性遺伝子発現や肝臓の線維化が抑えられたようです。
ちなみにアムホテリシンBは、腸内細菌叢に影響は少なかったようです。
人間にそのまま当てはめられませんが、腸内環境が、非アルコール性脂肪肝に影響がある可能性は高そうです。
A disease-promoting role of the intestinal mycobiome in non-alcoholic fatty liver disease – PubMed
<論文2>
腸内のカンジダが、肝疾患に関係しているとの論文です。
カンジダは、腸内環境悪化・免疫低下などで悪性化します。
炎症性サイトカインネットワークや、制御性T細胞を混乱させ、乳がんや、胃がんの進行にも関係します。
サッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)の有用性、役割にも触れられています。
The Role of Intestinal Fungi and Its Metabolites in Chronic Liver Diseases
<OAT検査>
今後は、エビデンスのために有機酸検査(OAT)を導入予定です。
有機酸検査(OAT) – 医療法人社団徳風会 こもれびの診療所|荒川区(南千住)の統合医療クリニックなら当院へ
この男児も、まだまだ改善の余地がありそうですね。

